2001桜桃忌レポート

桜桃忌の三鷹の空は、雨。であってほしいと思う
2001年、21世紀最初の桜桃忌、三鷹 禅林寺の上空は青空が広がっていた。
前日、京都から「ぷらっとこだま」を利用して上京していた私は、日傘と雨傘両方持ってきていた。
19日は、昼間はカンカン照りだったけど、夜、雨が降った。
昼、降ればいいのに・・・
でも、強い風が吹いた時の禅林寺の木々のざわめきの音のすごさ、まさにうねるようで
雨降ってたら、気が付かなかった。 大雨みたいにうねった音、
すごい音だった。 ちょっと発見でした。
墓前に向かうと、テレビカメラが何台かまわりを取り囲んでて、
ひとりひとりに、アナウンサーのような人がマイクで、
「猪瀬直樹先生のピカレスクはお読みになりましたか?」と聞いている。
しかし、私にはマイクを向けてこない。 読んでそうに見えない?
何人かに聞いてるけど、私が見てた限りでは、ほとんど「読んでません」って答えてたな
一緒にいたRR君は、「猪瀬先生に一言」と言われて、
「太宰と三島で食っていくのでしょうか?」と答えたそうな・・
ちなみにBS朝日が、年末に猪瀬氏の特集番組を組むそうで、桜桃忌の模様も撮ろう
ということらしい。 昨年は猪瀬氏来てましたが、今年はいらっしゃいませんでした。
今回、はじめてのことだと思うけど、なぜか鴎外の墓に、ロープが張られてて中に入れない
ようになってた。 あれはなぜだろう?
海月ちゃんをみつけ合流。 RR君と3人で、しばし感激の再会。
そして14時になり読経が始まる。
そのあと、ひとりひとり墓の前に立つ。 今年は、なぜか全員桜桃を埋め込んでました。
私は、なぜか今までにないくらい緊張した。 また一人でゆっくり来よう、
そんなことを考え墓前を後にした。
そう、禅林寺は、早朝、ひとりで来るのが一番良いのです。
一人の時は、門をくぐる時も、あの白いトンネルを抜けて一歩一歩太宰へと近づく時も、
向き合った時も、気分が全然違うのです。 なんだか、真っ白になれる、というか・・
ひとりごとを言っても誰にも聞こえない世界の方が、ここではうまく歩けます。
ほんとに、太宰さん、また来ますから、と心の中で繰り返す。

そして、講堂でのお話の時間へ
今年は、これが長い、長い。
私が体験した中では最長でした。
でも、発見もたくさんありました。 まず、「雀こ」です。
毎回、桜桃忌のあとには、「雀こ」の朗読があるのですが、私は今年初めてまともに聞きました。
海月ちゃんがプリントをコピーしてきてくれてて(ありがとう)字をたどっていって、耳を澄ませてました。
文中に時々出てくる言葉が気になった。
ずおん。
なんなんだろう、この響き
たった3音の言葉。「ずおん」
津軽の血を継ぎ、津軽の風土で生きてきた人にしか生み出せない
この「ずおん」
津軽言葉ってなんて心地いい旋律なんだろう
ある種、衝撃でした。
「美しさ」とも違う。 なんて表現したらいいんだろう
一言ではあらわせないけど、五能線の汽車の窓から見えた
津軽の海岸線の水しぶきを思い出した。
その小野、という名のお方(下の名前を聞くのを忘れました。すいません)の「雀こ」の朗読を
聞けた事は、今回 はるばる京都からやってきた甲斐あった、と思えた。
文学と芸術の関係って不思議
「雀こ」をテキスト上で読んだだけでは、絶対体得できない衝撃があった。
この朗読された先生、その後もいろいろお話してくれたのだけど、津軽の響きが心地よくて
私はもうずっと聞いていたかった。
太宰との生前の話もいくつかしてくれて、 今回こんなとっておきの話もしてくれた。
これは、講堂にいたある男性が、
「太宰が、井伏さんは悪人です。 と言ったことについてなにか知ってる方 おられませんか?」
というふうな質問をされた時に 答えられていた話なのですが、
「実は、太宰からこんな話を聞いた。 これはどこにも書いてなくて 今、ここではじめて口にするのだけど
井伏さんに、奥さんと別れなさい、と言われた。太宰はそのことを良く思ってなかった」と。
あと、「井伏さんは悪人です」と書かれたことに対して、井伏鱒二は、「旧知の煩わしさ」であろう、と表現した。
そのような興味深い話をたくさん聞けて、今回の講堂の話は、なかなかおもしろかったです。。。と言いたいが、
やはり正直な部分も書かなくては・・
今回の講堂のお話のはじめにいったん戻ります。
「雀こ」の朗読があり、先生のお話(名前をメモしてなくてすいません)、そのあと例によって自由に前に出て
質問なり、言いたい事を論じるなり、の時間があるのですが、今回若い人の申し出がすごく多かった
それはいいことだと思うのですが、ひとりで何回も手をあげる人が何人かいらっしゃって、ちょっと会場ブーイング
おこりそうな雰囲気あり、でした。 でも質問に対する先生の答えが聞きたくて、それでみんな耳を澄まして聞いていたのだと思う
それと、どんなに太宰ファンはやっぱり変わった人が多いな、と思っても(ごめんなさい。でも私もです。
失格、ということばがやたら似合いげな三十路の女子ですからに)
太宰の話する空間に身を置いてるのは、心地悪いものではない、と皆 思ってたと信じたい
あと、時々 みな振り返ってましたけど、ざわ〜〜〜って木々がうごめく音がするのです。
あれが気持ち良くて、晴れた日の桜桃忌の醍醐味と知りました。
6/19日のバリバリ平日のこの日、ここにやっぱり来てしまったみんな、その一人なんだ、という実感が湧いてきました。
「敗北の文学」について語る男性、「ICAN SPEAK」が好きだという男性、
今年の2/25の朝日新聞「文化」欄で、吉本隆明が太宰について書いてた記事のコピーを持ってきた男性、
「太宰治と女性」、をテーマに論文を書いた男性、いろんな方のお話がありましたが全員 男性です。
どうして女性がいないのでしょう?
私は海月ちゃんに前にでて話してほしかったな 学会で太宰、発表した経験あるのに(なんて書いてイヤ?なら言ってね)
私もいつか何かを発信できる時があるでしょうか?
そんなこんなしてると、表でお腹が痛い、とうめいていたRR君に呼ばれ 外に出ると紅月さんがいた。
会えて嬉しかったです。 でも今回は事情があり、すぐ帰ってしまわれた。 またの機会にお話しましょう。
その後、知らない男性がいろいろ質問してくる。 どうも桜桃忌にナンパ目的で来ているらしい
RR君と海月ちゃんに「そろそろ行きましょうか」と助けてもらい、禅林寺をあとにする。
今回、若い女性たちが、「変な男がいるの〜」とやたら言ってたのは、この男のことだろうか?
悲しいなあ。 この男が、桜桃忌の三鷹の空を晴れさせてるんじゃなかろうか・・・
あと、幻の太宰グッズがひそかに復活してたことを書いておかなくては・・
木をハート型にくりぬいたやつに、太宰のイラストと「生まれてすみません」って書いてるヤツ、
裏は斜陽館のイラスト。 (350円)あれが復活してて、思わず2つ購入しちゃいました。
昨年問い合わせた時は、「もう製造中止になりました」って言われたのに、また復活してた。
木でできててハート型、っていうのがたまらなくツボで、私は誰がなんと言おうと京都の町を
これをつけたカバンをさげて歩きます。 ますます失格キャラ〜

その後は3人で三鷹の町をとぼとぼと歩く
RR君はともかく海月ちゃんとは久々なので、話はつきないし、嬉しいし・・・
「キャンディさん、こんなところに土地が空いてるよ」なんて教えてくれたり、
(物件探しながら歩いてたので)
私が、お店の前で妙なくじびきをひかされ、2等がでてはしゃいでると、
「キャンディさん、あれ全部2等なんですよ、早く行きましょ」って教えてくれる。 私より大人ね、いろいろと。
桜桃忌後の三鷹散歩は、毎回 とてもいい気分でしあわせ
入水の場所までとりあえず行こう、ということになり、玉川上水沿いへ
王鹿石の近くの、カフェ、「マグノリア」で一服。
プレーリードッグがいたりして、コーヒーもケーキもおいしく、とても落ち着いたいいカフェです。
玉川上水沿いでお茶したい時に、おすすめです。
その後、いよいよ桜桃忌オフへ

いつもの「夢のれん」です。 ここ、いいですね。安いし、落ち着く。
到着すると、幹事のパーシーさんはじめみなさんおそろいでした。
はじめましての方、久しぶりの方、お会いできて本当に嬉しかったです。
ネット上では長いつきあいなのに、お初の方、 思ったとおりの雰囲気だったりして、
なんかホッとしたり・・
今回は、あの「中央線なヒト」の著者 三善里沙子先生も来られて、ビクリツしました。
パーシーさん、すごいわ〜
私の前に座られたので、本を持っていること、うちの書店で、本を売らしていただいたこと、など
お伝えし、緊張しましたが、とても気さくな方で、大変楽しいお話をいろいろさせていただきました。
先生いわく、「太宰の会っていうからこう、みんな下を向いて暗い雰囲気なのかと思っていたが、違いますね」
とのこと。 やっぱり太宰のイメージって、一言で言って「生まれてすみません」なのかな
席を少し移動して、はじめましての方が多い所に交じってみました。
「太宰の作品で何が好き?」という話題になり、私が「斜陽」と即答すると、
男性軍にはちょと評判が悪いようで、「あそこまでいくとちょっとひく」らしい
だって美女には斜陽が似合うのだから(笑) 最近では、月9にも登場するのですよ!
(江角マキコが新潮文庫の「斜陽」を読んでるシーンがありました。ラブレボ=恋と革命)
「じゃ、何が好きですか?]
「ヴィヨンの妻です」
いいですね〜 「ヴィヨンの妻」が好き、という男性なら もしこれが合コンなら
とりあえずトイレの前で待ち伏せ対象内ですね。 なんかわけがわかりませんが
そんなかんじで楽しく時は過ぎてゆきました。
そこでパーシーさん、「中央線度テスト」なるものを用意してきてたのです。全員スタートです。
項目は、「一年後はなにをしてるかわからない」
「イヌよりネコが好き」等・・・
結果中央線度ナンバー1は、ポラリスさんでした。 私はちなみに11点で、中の下くらいでしたね
最高点から最下位まで全員に、パーシーさんからお菓子の贈り物がありました。 細やかな心配りですね〜
そんなかんじで1次会は終了。 ほろ酔い気分が心地よいです。
そして2次会のカラオケへ。 海月ちゃんとは今日はここまでですが、いろいろありがとう。また会いましょう。
外に出ると、雨が降っていました。
やっぱり6/19の三鷹は雨が降らないと・・
少し濡れましたが、気持ち良かったです。
カラオケ店では、マッチさんが座っていました。 お会いできると思ってなかったのですごく嬉しかったです。
あ、今年はグローブ歌ってませんね
他にも桜桃忌オフで出会った何人かの方と再会できたのですが、やっぱり感激もひとしおでした。
本当に、憧れの人 ばかり、なのです。
私も、酔いのせいかフリつきで歌ってしまったり、ホント思い出しても恥ずかしい。。失格のしめでした。
そんなかんじで6/19の三鷹の夜は終わっていきました。
パーシーさん、多人数でいろいろ大変だったと思います。 本当にご苦労様でした。
企画していただき、感謝しています。
お会いできたみなさま、また機会があったらお話しましょう。

6/20には、鎌倉文学館に太宰が冨江に出したという手紙を見に行きました。
そこで、津軽の「太宰治生誕祭」というポスターを見ました。
天下茶屋でも、「山梨桜桃忌」があったのですね。
そっちの方にもいつか行ってみたいです。
「桜桃忌」に行くより、することあるでしょう? って言う人は多いけど、
やっぱり、自分にとって人が何といおうと「最優先」なのです。
あの「ずおん」がまだ残って離れなくて、燃えているのです。
それを大切にしていくのが自分にとって、些細な喜びなのです。
太宰ってなんだろう
その答えが知りたくて、また毎日過ごしてゆきます。
三鷹でまた会いましょう。


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